小坂裕司の「『感性』のマーケティング」

感性のマーケティング

 

小坂裕司の「『感性』のマーケティング」を読む。

本書はビジネス活動の視点を、企業側のロジックではなく、人間の「感性」から捉えることで、新たなマーケティングのロジックを提案する本。ニューロマーケティングを過去に勉強し、現在企業のブランディングを手がけている僕にとって、知的好奇心が刺激されるタイトルだ。

 

 

著者は「感性」でビジネスを組み立てる仕組みとして、以下の通り「3つのモジュール+1」ロジックを提案している。

1)感性トレンド 
2)感性メカニズム
3)認知メカニズム
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特定の感性、認知メカニズムに関するデータ

 

そして、「感性」のマーケティングには以下の6つのインパクトがある、と説明している。

1)提供すべきサービス
2)商品の要点
3)企業力の要点
4)顧客との関わり
5)顧客の選択基準
6)企業の収益力の基盤
 

 

しかし、読み進めるにつれ、ここで語られる「感性」のマーケティングを説明する上記アウトラインのアンバランスがどうしても気になってしまう。あまりにも項目別の情報の濃度が違いすぎるし、そもそもこのアウトラインの作り方が理解しづらいと感じた。読者として、そのように一度感じてしまうと、本書のロジックを既成事実として補足するために用いられた事例の説明すらも稚拙に思えてしまう。アプローチは良かったのに、とても残念だ。

そもそも、本書が発行されたのが2006年であり、ソーシャルメディアが定着した現代におけるAISASマーケティング理論における「SHARE」の概念がすっぽり抜けてしまっている。今の時代、「SHARE」を語らずして「感性」のマーケティングは成立しないので、本書を読む人は、あくまでもOne-to-Oneマーケティング時代の延長で「感性」に着目したロジックとして捉えると良いのかもしれない。

新しい概念を世に紹介する上では、とにかくアウトラインの構築(その情報の濃度)がとても大事なんだという、書籍の内容とは異なるところで学びを与えてくれた一冊。

 

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