花火大会の最後に、QRコードが浮かんだ ── ドローンが「事業の部品」になった夜

ドローンクリエイティブ研究所|研究室ノート(R&D Notes)#001

8月1日の夜、地元・茅ヶ崎の「サザンビーチちがさき花火大会」を見てきました。台風で中止になった前回を挟んで、2年ぶりの開催です。

2年ぶりに開催されたサザンビーチちがさき花火大会。浜辺は多くの観客で埋まっていた
2年ぶりの開催。浜は人でいっぱいでした

終わったのかな、ちょっと早いな——そう思って歩き出したところで、光の筋が夜空に上がりました。それがフォーメーションを組み、ドローンのメッセージが浮かび上がる。周りからは「おおーー」という声。

夜空にドローンの編隊が描いたメッセージ
光の筋が上がり、フォーメーションを組んでメッセージになりました

空に浮かんだのは花火ではなく、メッセージと——QRコードでした。

花火大会の夜空にドローンが描いたQRコード。中央に花火のマークが入っている
そして、QRコード。中央に花火のマークが入っていました

花火大会の空にQRコード。帰り道からずっと気になって、翌朝、調べてみました。

調べて分かった、この夜の設計

あの演出は、キリンビールの「晴れ風ACTION 未来につなぐ希望の花火 2026」という企画の一部でした。発表資料によると、仕組みはこうです。

  • 全国で中止となった花火大会の、打ち上げられなかった花火玉を集めて、この大会の中で打ち上げる
  • その様子をドローン空撮でライブ中継する
  • 中継の視聴数に応じた金額が、全国の花火大会の支援活動に寄付される
  • あわせて、晴れ風ACTIONの思いを夜空に表現するドローンショーを実施する

つまりこの夜、ドローンは2つの仕事をしていました。

仕事1:カメラとして ── 空撮が「収益装置」になる

1つ目は空撮です。ただし、よくある「きれいな上空映像」のためではありません。中継の視聴数がそのまま寄付額に変わる設計なので、空撮映像そのものが、支援金を生む装置になっています。

映像は「絵づくり」のためにある——ドローンを10年以上使ってきた私も、ずっとそう考えてきました。この企画では、映像が事業モデルの中に組み込まれています。

仕事2:サイネージとして ── 空のQRが、観客を仕組みに接続する

2つ目が、私が見たQRコードです。

会場には大勢の観客がいます。その人たちに向けて、夜空そのものをサイネージにして、スマホをかざせば仕組みに参加できる入口を出す。目の前の観客を、その場でライブ中継と支援の輪に接続する動線です。

紙のチラシでも、場内アナウンスでもなく、花火を見上げているその視線の先に入口を置く。しかも出すのは、観客が「終わったのかな」と歩き出しかけた、気持ちがいちばん高まっているその瞬間です。元広告会社のCDとしては、このタイミングの使い方にはあっぱれと感じました。

ちなみに、私もその場でスマホをかざしてみましたが、距離のせいか、読み取ることはできませんでした。空に浮かぶQRコードの実効性——ここにはまだ課題もありそうです。こういう部分も含めて、研究材料だと思っています。

その夜の様子は、ショート動画にまとめました。

考察:花火とドローンは、性質が逆だから組み合わさる

花火は、一回きりで、その場で消えて、その土地のものです。だからこそ美しいのですが、中止になれば、その年の花火玉は行き場を失います。

ドローンは逆です。プログラムどおりに何度でも飛び、記録でき、映像は全国に配れます。

この企画は、消えるはずだった花火を、消えない仕組み(中継・視聴・寄付)に載せ替えた——そう読めます。そして、その載せ替えを物理的に担っていたのが、カメラとサイネージというドローンの2役でした。

ドローンは「撮影の道具」から、「事業の形を変える部品」になり始めている。地元の花火大会の空で、その実例を見た夜でした。

研究所として

ドローンクリエイティブ研究所は「ドローンと、まだない仕事を創る」を掲げて、こういう事例の研究と、実際の仕事の両方をやっています。この記事はその研究記録(R&Dノート)の1本目です。

こうしたドローンと広告を組み合わせた仕組み、新しいビジネスの形をつくることは、研究所がまさにやりたいことです。良い見本を見せてもらいました。

なお、ああした夜のショー飛行は、目視外、そして催し(イベント)上空という、飛行の中でもかなり高度な部類に入ります。私自身の資格ではまだ飛ばせない領域ですが、研究所には対応できる研究員がいます。「自分たちのイベントでも、こういうことができないか」——そんな相談も歓迎です。

この記事は、その研究記録の1本目です。これからも、こうした事例を見つけるたびに書いていきます。

なお、この夜のことは、主宰の長澤が個人noteの連載「AIは俺のスタンド」でも書いています。こちらは「なぜこの企画はAIには思いつけないのか」という視点です。
花火大会は、人の感情の集合体だった ── AIには、この企画は思いつかない

▼ 研究室ノート #002
ドローンを10年飛ばしてみたら GoProはドローンから撤退しDJIはアクションカメラを出していた


著者:長澤宏樹(アロハ・ブランディング代表/ドローンクリエイティブ研究所 主宰)

出典


ドローンクリエイティブ研究所

ドローンと、まだない仕事を創る。

ドローンで何ができるかを考え続けながら、実際の仕事も動かしていく場所です。今回のような「ドローン×企画」の設計から、ブランディング映像、観光プロモーション、産業点検の空撮まで。国家資格保有者のネットワークで対応しています。

「うちのイベントでも、こういうことができないか」——そのくらいの段階のご相談から歓迎です。一緒に考えたい方、コラボしたい方も、どうぞ。

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