ヒグマの見回りにドローンが24回飛んだ 北海道上砂川町の5日間

可視光カメラによる確認映像
可視光カメラによる確認映像(画像:そらいいな株式会社のPR TIMES発表より)

ドローンクリエイティブ研究所|研究室ノート(R&D Notes)

北海道の上砂川町で、ヒグマの見回りにドローンを使う実証が行われました。10月5日から9日までの5日間で、飛んだのは24回。10月6日の巡視では、ヒグマを確認しています。

発表したのは、ドローン物流を手がけるそらいいな株式会社です。豊田通商が事業主体となった実証で、内閣府の委託事業の一つとして行われました[1]。10月15日に出た発表を読んで、研究所の記録として残しておくことにしました。

ヒグマは数日同じあたりにとどまる

発表によると、上砂川町をはじめ北海道の自治体では、ヒグマが町の中の、人が暮らすあたりに出てくることが起きています。しかもヒグマは、同じ個体が数日にわたって周辺を動いたり、とどまったりする傾向があるそうです。出てきた直後に対応するだけでは被害を防ぎきれないので、しばらく見回りを続けることになります。

その見回りは、いまは町の職員などが目で見て回るのが中心です。範囲が広いぶん手間がかかり、早朝や夕方には、回っている人がヒグマに出くわすおそれもあります。

そこで、離れた安全な場所から操作できて、少ない人数でも見回りを続けられるドローンを使う計画が立てられました。

早朝と夕方に24回飛んだ

機体は、アミューズワンセルフの「GLOW.L rev2」です。光学カメラとサーマルセンサーを積み、撮ったデータをその場で送ります。送られたデータはAIを含むソフトウェアで処理し、自動で見分けることでどれだけ手間が減るかも確かめています。

ルートは、過去にヒグマが出た場所を中心に組まれました。目撃の多い早朝と夕方を中心に、レベル3.5の飛行で見回っています。

5日間の合計は、24回、11時間03分、95kmでした。

ヒグマを見つけて飛び方を変えた

10月6日の巡視でヒグマを確認すると、上砂川町とあらかじめ取り決めていたとおり、航空法第132条の92の特例を使いました。

この特例は、事故や災害で人の命や財産が危なくなるおそれがあるときに、国や自治体、またはその依頼を受けた人が捜索や救助のためにドローンを飛ばす場合、安全の手当てをしたうえで、飛行の許可を待たずに飛ばせる制度です[1]。

これを使って、ヒグマを見つけた場所を重点的に見張るための経路を新しくつくり、飛ばしています。見つけたあとにどう飛ぶかは、町と先に決めてありました。

目指すのは町が自分で続けられる形

実証の目標は、自治体が自分たちで組み立てて運用できるヒグマ対策の形を官民でつくることでした。目指した体制は2つあります。目撃の通報が入ったら、すぐに安全を確かめられる体制。そして、ヒグマが出やすい時期と場所で、出てくる前から見回りを続けられる体制です。

結果として、サーマルセンサーを使うことで、目では見えにくい環境でもヒグマなどの鳥獣を見つけられたそうです。離れた場所から操作したので、回る人の安全を保ったまま、人が見回るのと同じ効果があったとしています。

今後は、データを分析してAIの自動検知の精度を上げていきます。翌年度以降も自治体が続けて運用できるように、体制を地元に移す話し合いも進めるそうです。緊急時の特例飛行を含めた運航マニュアルも、共同で整えていくとのことです。

地元で飛ばす人が要る

体制を地元に移すなら、地元で飛ばす人が要ります。

レベル3.5の飛行には、国土交通省が示している条件が3つあります[2]。

  • 機体のカメラと地上のモニターで、進む先の真下とそのまわりに人が入っていないことを確かめられること
  • 十分な補償ができる第三者賠償責任保険に入っていること
  • 操縦する人が、無人航空機操縦者技能証明(国家資格)を持っていること。それも、目で見える範囲に限るという条件を外したものであること

一等か二等かは問われません。ただ、国家資格を持っていなければ、レベル3.5では飛ばせません。

研究所として

ドローンクリエイティブ研究所は「ドローンと、まだない仕事を創る」を掲げて、こうした使い方を調べて記録しながら、実際の仕事も動かしています。10月4日には、国家資格を持つ7人で初めて集まりました。そのときのことは「ドローンは孤独な作業 国家資格を持つ7人で初めて集まってよかった3つのこと」に書いています。

自分の地域でも、こういう使い方ができないか。そのくらいの段階の話でも、声をかけてもらえたらうれしいです。

研究所の活動と、これまでの撮影の仕事は、こちらにまとめています。

ドローンクリエイティブ研究所
ドローンと、まだない仕事を創る。
ここはドローンで何ができるかを考え続けながら、実際の仕事も動かしていく場所。
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著者:長澤宏樹(アロハ・ブランディング代表/ドローンクリエイティブ研究所 主宰)

出典

  1. そらいいな、豊田通商(株)と共同でドローン・AIを活用したヒグマ対策実証を実施(そらいいな株式会社・PR TIMES・2026年10月15日)
  2. カテゴリーⅡ飛行(レベル3.5飛行)の許可・承認申請について(国土交通省 航空局 無人航空機安全課・令和6年2月)

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