自社の強みが見つからないとき 自分たちの毎日を外から見つめ直す|超翻訳第26回
アロハ・ブランディング代表の長澤宏樹です。
本日、連載「超翻訳 ── 伝えたいを、伝わるカタチに。」の第26回を note で公開しました。新幹線の清掃と、青梅慶友病院のショート動画の話です。
自分たちの当たり前は、なかにいると見えにくい。他でやっていない当たり前こそ、しっかりと見せる。

良さを伝えたいのに ありきたりな言葉になる
ホームページで、自分の会社やサービス、ブランドの良さをしっかり伝えたい。けれども、上司の顔色を見たり、関連各社に忖度したりしながら書いていくと、結局、「丁寧な仕事」「安心の品質」といった、ありきたりな言葉になる。同業の会社のホームページを見ると、同じ言葉が並んでいる。自分たちならではの良さが伝わっていないかも?
こういうことって、ないですか。
新幹線の清掃は 7分間の奇跡と呼ばれている
東京駅に着いた新幹線は、折り返して出発するまで、ふつうは12分しかない。
そのうちのわずか7分間で、客席からデッキ、トイレまでをきれいにするチームがいる。JR東日本テクノハートTESSEIの人たちだ。1本の列車を原則23名で受け持つ。
清掃が終わると、スタッフ一同がホームに出て、お客さまに一礼し、ホーム下の詰所に戻っていく。
1991年に東北・上越新幹線が東京駅に乗り入れたときから続く、毎日の仕事だ。そのチームワークは「7ミニッツ・ミラクル(7分間の奇跡)」とも呼ばれ、小学校の教科書にも載っている。
毎日くり返している清掃が、外の人には奇跡に見えた。
出典:栗原景「~技術と心でおもてなし~ TESSEI「7分間の奇跡」に迫る」トレたび(交通新聞社)2025年7月18日
病院の毎日を そのままショート動画にした
私の仕事でも、同じことがあった。
東京・青梅に、高齢者医療の青梅慶友病院がある。「豊かな最晩年をつくる」を掲げる病院で、以前から映像の仕事を手伝ってきた。
この病院で、病院の広報チームと一緒に、病院の日常を伝えるショート動画を始めた。病院で(しかも晩年を豊かにする病院が)SNS? そう思う人も多いかもしれない。
きっかけは、コロナ禍だった。病院を訪れることのできなかった患者様のご家族様に向けて、病院の日常を引き続き見えるようにするために始めた。
ご家族にとって、いままで当たり前だったことを伝え続ける方法だった。
この病院では、美味しいものは生きがいという考えのもと食をとても大切にとらえている。また、プロによる音楽やアートのパフォーマンスがあり、季節を感じるイベントもある。そして何よりも、患者様の尊厳を守ることを大切にしている。
この、病院側では当たり前にやっていることが、ショート動画を通じ、病院を知らない人にとっても見える化になり、好評を呼んだ。
なかでも人気が出たのが、病院の食事を撮った「おいしい病院シリーズ」だ(これまた病院食にも関わらず、だ)。シリーズでいちばん見られている「そうめん」の回は9.8万回、お味噌汁の回も6.8万回見られた(いずれも2026年10月時点)。
一本で677万回以上再生された動画もある(2026年10月時点)。ご病状が進み、食事を召し上がれなくなっていた患者様が、ぽつりと「ラーメンが食べたい」と言った。病棟のスタッフが調理師に相談すると、返ってきたのは「やりましょう」。ベッドサイドでラーメンを作ると、患者様は口から召し上がった。その様子を撮った動画だ。
ブランドムービーも作った。注目したのは、病院での当たり前のように飛び交う挨拶だ。ちょっとしたことだが、どこの病院でも当たり前、というわけではない風景がここにある。だからこそ、挨拶を強調して作らせてもらった。
「丁寧な仕事」と書く代わりに、大量の出汁を丁寧に取る姿を見せた。挨拶も、言葉で説明する代わりに、ブランドムービーで映した。
その後、青梅慶友病院は、病院広報アワード2025の広報担当部門(SNS)で優秀賞を受けた。広報チームが、日常の風景をしっかり伝えようと、真摯に向き合ってきた結果だ。
病院の人にとっての当たり前の日常は、外の人にとって、見たかった景色だった。
自分たちの毎日を 外から見つめ直す
青梅慶友病院の食事も挨拶も、なかの人にとっては毎日のことだった。外の人には、それこそが見たいものだった。
自分たちの当たり前は、なかにいると見えにくい。
明日から試してみる
この考えを取り入れて、明日から実践するとするなら、まず、一歩引いたところから、自分たちの日常を俯瞰して見つめてみてほしい。工場なら検品のやり方、お店なら仕込み、事務所なら電話の取り方。毎日当たり前にやっていることだ。
次に、外のお客様が言った一言をメモしておく。驚かれたこと、ほめられたこと、思わぬところで喜ばれたこと。その場で書きとめないと、すぐに忘れてしまう。
そして、SNSなどで傾聴するくせをつける。自分たちのことが、外でどんな言葉で話されているかが見えてくる。
そうして見つけた当たり前が、同業のホームページに書かれていなければ、慶友病院の挨拶のように、強調して見せることも一つの手かもしれない。
他でやっていない当たり前こそ、しっかりと見せる。
よくある質問
自社の強みが見つからないのは なぜですか?
自分たちの当たり前は、なかにいると見えにくいためです。新幹線では、毎日くり返している清掃が、外の人には「7分間の奇跡」に見えました。青梅慶友病院の食事も挨拶も、なかの人にとっては毎日のことでしたが、外の人には、それこそが見たいものでした。
自社の強みを見つけるために 明日からできることは何ですか?
まず、一歩引いたところから、自分たちの日常を俯瞰して見つめてみます。工場なら検品のやり方、お店なら仕込み、事務所なら電話の取り方のように、毎日当たり前にやっていることです。次に、外のお客様が言った一言をその場でメモしておきます。驚かれたこと、ほめられたこと、思わぬところで喜ばれたことです。そして、SNSなどで傾聴するくせをつけると、自分たちのことが外でどんな言葉で話されているかが見えてきます。
見つけた当たり前は どのように見せればよいですか?
同業のホームページに書かれていなければ、強調して見せることも一つの手です。青梅慶友病院のショート動画では、「丁寧な仕事」と書く代わりに、大量の出汁を丁寧に取る姿を見せました。挨拶も、言葉で説明する代わりに、ブランドムービーで映しました。
新幹線の「7分間の奇跡」とは何ですか?
東京駅に着いた新幹線は、折り返して出発するまで、ふつうは12分しかありません。そのうちのわずか7分間で、JR東日本テクノハートTESSEIのチームが、客席からデッキ、トイレまでをきれいにします。1本の列車を原則23名で受け持ち、清掃が終わるとスタッフ一同がホームに出て、お客さまに一礼します。1991年に東北・上越新幹線が東京駅に乗り入れたときから続く仕事で、そのチームワークは「7ミニッツ・ミラクル(7分間の奇跡)」とも呼ばれ、小学校の教科書にも載っています。
青梅慶友病院のショート動画は なぜ始まったのですか?
きっかけはコロナ禍でした。病院を訪れることのできなかった患者様のご家族様に向けて、病院の日常を引き続き見えるようにするために始めました。その動画が、病院を知らない人にとっても見える化になり、好評を呼びました。
青梅慶友病院のブランドムービーでは 何を強調したのですか?
病院で当たり前のように飛び交う挨拶です。ちょっとしたことですが、どこの病院でも当たり前、というわけではありません。だからこそ、挨拶を強調して作らせてもらいました。
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