言語化できないのは、語彙の問題ではない|超翻訳
Aloha Branding 代表の長澤宏樹です。
本日、連載「超翻訳 ── 伝えたいを、伝わるカタチに。」の第17本を note で公開しました。

「うまく言語化できなくて」と言ってしまう
初めて会った相手に、自社のことを説明する。ひととおり話し終えて、最後にこう付け足したことはないだろうか。
「すみません、うまく言語化できなくて」
言った本人は、語彙の問題だと思っている。もっと的確な言葉を知っていれば、うまく言えたはずだ、と。
だが、その場で本当に起きているのは、別のことだ。聞いていた相手の手元に、持ち帰れるものが何も残らない。何が得意な会社なのか、どこが他と違うのか。残らなければ、あとで思い出されることもない。次の話は、そこで途切れる。
そして原因は、たいてい語彙ではない。言葉にする材料が、まだ手元に出ていない。
訳す前に、並べる
何かを伝えるとき、人は無意識に、その出来事を「翻訳」している。ただ、翻訳しているという自覚を持っていることは、ほとんどない。
ここに、認識のギャップがある。
訳す人は、本来、いきなり訳しはじめない。まず原文を読む。何が書いてあるかを把握してから、どう訳すかを考える。
自社のことを伝えるときも、順序は同じだ。ところが多くの場合、原文を読まないまま訳そうとしている。手元にあるのは、頭の中のぼんやりした自己像だけ。それを言葉にしようとするから、出てこない。
出てこないのは当然だ。訳す対象が、まだ形になっていない。
だから最初にやることは、うまい言い方を探すことではない。自分の会社がやってきたことを、机の上に全部出す。それだけだ。
営業が苦手だったから、実績を整理していた
私自身、これを長いことやってきた。ただし、格好のいい理由からではない。
過去に書いた本に、そのまま書いている。
「僕自身、営業が苦手という意識がありましたので、昔から過去の制作実績を整理するために時間を使ってきました」
『思いが伝わる! 心を動かす! アイデアを「カタチ」にする技術』(総合法令出版)
営業が得意な人は、その場で話せる。私は話せなかった。だから、話す代わりに、済んだ仕事を並べておくしかなかった。それが、営業する以上の成果につながったこともあった。
並べるとき、毎回、同じ四つを自分に聞いていた。これも本に書いた。
- 何がプロジェクトのウリだったのか
- もう一度やるとなると、どこを改善すればよいか
- 決め手は何だったか
- 同じような企画を欲しているほかのクライアントはいないか
書いたときは、営業が苦手な人間の、苦しまぎれの工夫のつもりだった。いま振り返ると、これは翻訳の前の作業そのものだ。原文を読んでいた。
そして、並べているうちに、次のクライアントの顔が見えてくる。言葉を探しているあいだは一度も浮かばなかった相手が、材料を並べた途端に浮かぶ。
当たり前だと思っていることほど、外される
やってきたことを並べていくと、ほとんどの人が、途中で同じことを言う。
「これは普通のことだから」「うちくらいの規模なら当たり前だから」
そして、その仕事を、並べずに手元で外してしまう。
だが、当たり前かどうかを決めるのは、社外の人だ。中にいる人にとって当たり前のことほど、外から見ると珍しい。続けてきた年数。断ってきた仕事。他社がやらない工程。クレームの少なさ。辞めない社員。どれも、社内では話題にすらならない。
だから、並べる段階では、選ばない。選ぶのは、訳す工程だ。並べる工程と選ぶ工程を同時にやろうとするから、手が止まる。
思い出せるだけ、書き出してみる
むずかしいことは、しなくていい。
直近の一年でやった仕事を、思い出せるだけ、箇条書きで書き出してみてほしい。一年に区切るのは、そのほうが手が動くからだ。きれいにまとめなくていい。順番も、いらない。「これは大したことない」と思ったものも、消さずに残す。
書き終えたら、そのうちの一つに、四つの問いを当ててみる。ウリは何だったか。もう一度やるならどこを直すか。決め手は何だったか。同じものを欲しがっている会社は、ほかにないか。
言葉は、そのあとでいい。訳す作業は、材料が机に載ってから始まる。
そして、材料が並んだ机の上には、たいてい、次に会うべき相手の顔まで写っている。
あなたのブランドは、ちゃんと「伝わって」いますか。「伝えているのに、伝わっていない」と感じるなら、その理由を、一緒に見つけます。
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連載「超翻訳 ── 伝えたいを、伝わるカタチに。」/毎週月曜、朝7時更新
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