伝えたいことが多すぎると、なぜ何も残らないのか|超翻訳
Aloha Branding 代表の長澤宏樹です。
本日、連載「超翻訳 ── 伝えたいを、伝わるカタチに。」の第18本を note で公開しました。

「強みを教えてください」と言われて、五つ答えた
取引先や採用の候補者に、自社の強みを聞かれた。技術力、対応の速さ、創業からの年数、担当者の人柄、価格。全部本当のことだから、五つとも答えた。
相手はうなずいて、メモを取る。悪くない空気で、その日は終わる。
だが数日後、その相手が社内の誰かに自社のことを説明するとき、五つのうちいくつが出てくるだろうか。
たいてい、ゼロだ。
五つ言われた側の頭には、五つ分の印象が薄く広がるだけで、輪郭のあるものが一つも残らない。
多く言ったぶんだけ、一つひとつが薄くなる。
幕の内弁当か、一品料理か
過去に書いた本で、コンセプトのつくり方について、こう書いている。
「色々言いたいことが詰まっているコンセプトは幕の内弁当みたいで、『コレ!』という売りを見えづらくさせてしまう」
そして、こう続けた。
「強烈な記憶に残る一品料理を目指すつもりで、〝引き算〟で発想する」
幕の内弁当が悪いのではない。おかずは、どれもおいしい。ただ、食べ終わったあとに、何を食べたかを思い出せない。
自社の説明でも、同じことが起きている。全部本当で、全部いいことなのに、相手の記憶には何も立たない。
何を残すかを決めているのは、こちらではない
ここで多くの人が、いちばん自信のあるものを選ぼうとする。技術力がうちの一番だから、技術力を残そう、と。
だが、選ぶ基準は、本来こちら側にはない。
何かを伝えるとき、人はその事象を訳している。ところが、訳しているという意識を持っていることは、ほとんどない。ここに認識のギャップが生まれる。
こちらは「うちの良いもの順」で並べているのに、聞いている側は、まったく別の順番で聞いている。
いま自分が決めかねていることに、答えが出るかどうか。その一点だ。
どこに頼むかをまだ決めかねている相手には、実績の数が残る。納期が読めるかどうかで迷っている相手には、工程の話が残る。同じ話をしても、相手が何を決めようとしているかで決まる。
何と比べているかは、たいてい聞けば教えてもらえる。「ほかに、どんなところを見ていますか」。この一問の答えが、相手がいま決めかねていることの、いちばん短い説明になる。
次に会う相手が、何を決めかねているか
むずかしいことは、しなくていい。
まず、聞かれたら答えるつもりでいることを、書き出してみてほしい。五つでも十でもいい。すでに書き出してあるなら、それでいい。ただし「技術力」「対応が速い」のような一言ではなく、実際にやった仕事の名前で書く。どの会社の、何をやったか。一言は、選んでも相手の頭に残らない。残るのは、いつどこで何をやったかのほうだ。
選ぶのは、そのあとだ。
次に会う相手を一人だけ思い浮かべて、その人がいま何を決めかねているかを、一つだけ書いてみてほしい。
想像で埋めなくていい。手がかりは、相手がもう口に出している。前に会ったときに聞かれたこと。二度聞かれたこと。こちらが答えたあとに、相手がメモを取ったところ。人は、決めかねていることを質問の形で出す。
値段なのか。納期が読めないことなのか。担当者が途中で変わるかもしれないことなのか。そもそも、どこに頼むかをまだ決めていないのか。
次に会う予定がまだないなら、最後に断られた相手でもいい。あのとき何を決めかねていたのかは、済んだあとのほうがよく見える。
それが決まったら、手元にあるものの中から、その一点に答えが出るものを一つだけ選ぶ。ただ、この選ぶところが、自分ひとりだといちばん難しい。自社のことになると、どれが相手の一点に答えているのかが、途端に見えなくなる。
残りは、捨てるわけではない。聞かれたときのために、持っておくだけだ。
選べたかどうかは、その場で分かる。一つ言ったあとに、相手が次の話に進むなら、当たっている。「他にはどんなことが?」と聞かれたら、まだ当たっていない。そのときは、選び直せばいい。持っているものは減っていない。
一品料理は、材料が少ないから一品になるのではない。たくさんある中から、その日の客に合わせて一つに絞るから、記憶に残る。
あなたのブランドは、ちゃんと「伝わって」いますか。「伝えているのに、伝わっていない」と感じるなら、その理由を、一緒に見つけます。
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連載「超翻訳 ── 伝えたいを、伝わるカタチに。」/毎週月曜、朝7時更新
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